強い弓(自分の中で)を引く理由弓力23sの弓を引くきっかけは、平成16年の6月に受けた審査です。4段を受けたわけですが、審査なんて多少受かりそうな予感が自分の中に生まれない限り、なかなか挑戦出来ないモノです。その時の私も丁度調子の良い時期が続き、重い腰を上げたのでした。 審査当日の朝、私は愕然としました。弓がまともに引けないのです。弓が体に全然近づかず、詰合い所じゃありません。従って、矢が的までとどかないのです。一瞬のうちの血の気が引きました。朝9時台に審査の結果が分かってしまったのでした。実際、本番でも無茶苦茶。甲矢はまぐれ中り(弓手馬手を思いっきり切り下げ)、乙矢はビクが連続して起こり、離すのが精一杯であえなく滑走・・・。帰りの車の中で色々考えました。しかし、原因を断定するまでには至りません。徹底的な調査をすることとしました。 色々実験的に弓を引き、それをビデオで撮影しながら家で分析。何週間後におぼろげながら原因が見えてきました。ごく単純な話ですが、「手先だけでの弓を引いている」というモノなのです。その時分の弓力は16s。このくらいの弓力なら手先だけで十分に操作が出来てしまいます。しかし、手先で引いていますので、調子の変動が表面化され易くなり、弓が復元する時の運動エネルギーが、十分矢に伝わっていない事も確認できました。ちょうど良い機会です。さっそく根本的な射の修正に取りかかりました。 確かに打起こし・三分の二・詰合いで手先と肩、さらに体の真ん中を十分に噛み合わせることが出来ればそれなりの結果もでて、ビデオで確認しても射の変化が確認できました。しかし、数週間後に手先で引いている射に戻ろうとしている事に気づかされました。的中・矢所・矢飛びで直ぐに分かることです。やはり、弓力が16sなので、手先だけでも的まで矢を飛ばせてしまうという所に、弓道誌2005年3月号で紹介されていた、稲垣源四郎先生の言葉、「とかく人は易きに流れ易い」が顕著に表れてしまいました。心の油断、無意識下で簡単な方(今までやっていた従来の方法)に流れる不用意な練習。これではいけない・・・、どうしたら良いか・・・・・・? 気づきました!手先だけでは絶対に引けない弓で練習すればよいのです。そうです、弓力を思い切って20sに上げようと決断したのでした。 というわけで、以前に一張りお世話になった柴田勘十郎さんの弓を購入することにしました。確か、電話でアポをとってからお邪魔したような気がしたのですが、丁度弓力20sの弓が無く、どうしようかなと悩んでしまいました。そこから長時間、色々と事の経緯を柴田さんとお話ししたような気がします。そのうちに何故か弓力23sの弓を購入することになっていました。決断の理由は、「20s超えると、20sも23sもそう変わりませんよ。」の一言でした。購入した弓は京都らしい美しい曲線で構成されており、綺麗な側木でした。しかし、素引きすると・・・、実際にカケ付けて引けるのかしら?・・・、少々不安ながら徳島に帰ってきました。 数日後、実際に引いてみました。不安はその現実で解消することが出来ました。全く離せません。引けるのですが、離せないのです。離そうとするとビクが連続して発生してしまいます。「困ったな・・・」、正直な感想です。しかし、買ってしまった以上は引くしかない、一種の諦めに似た心境で、周りの目など気にせずに矢数を掛けました。一週間経った頃にやっと離すことが出来るようになってきました。前矢が殆どだったのですが・・・。そんな内に、弓から「ミシッ」と嫌な音がし始めたのです。しかし、弓には何の異常も見あたりません。引き続き引き続けることにしました。そして、打起し・三分の二と進んでいると、「パンッ(非常にかん高い音)」やってしまいました。自分は外竹をやったのだと思いましたが、外竹には異常はありません。色々と観察していますと、分かりました、内竹の上成節で節浮きを起こしたのでした。空筈に近い離れをやってしまいましたので、それが原因だと思います。可哀想なことをしましたが、早々に柴田さんと連絡を取って、再度京都に行くことにしました。内竹の張り替えを行うこととなり、帰ってからも稽古出来る様に、同じ弓力の弓を手に入れて徳島に帰りました。 その後も一所懸命頑張りました。悪戦苦闘の末、練習中の的中がようよう五割を超えることが出来るような射になってきました。かといって、少しでも油断すると手先で引いてしまい、ビクが出てハッと気付かされるのです。とは言え、平成17年の後半からはまあまあの矢飛びと的中がみられ、心の中でうっすらと4段審査を意識するまでになりました。 審査には、自己の射にある程度の自信が持てるときに出るようにしています。平成17年には審査という文字が頭の中をよぎったことが数度ありました。しかし、自己の詰め作業の段階で挫折を繰り返しをしていました。そんな内に嫁さんが妊娠して家の中が慌ただしくなり、18年4月には娘が誕生。知らぬ間に所属する支部で弓道教室も始まり、稽古量が激減していったのでした。そのうちに、勘が鈍りだして弓力も維持出来なくなって、以前に鹿児島の桑幡元象さんに打って頂いた「一燈斎」20sを使うようになりました。とは言え、弓力は20sあります。しかも稽古は週1回あるかないかです。疲れている時や、勘が鈍っている時などは射になりません。高校時代に使っていたグラスの16sを使おうかと何度も悩みました。この稽古で駄目駄目だったら、思い切ってグラス弓に切り替えようと覚悟して稽古に臨みますと、何のことはない、全く苦に思わず弓を引くことが出来るのです。どうしてなのか?非常に不思議な感覚・体験です。そのような経緯があって、現在でも20sの弓を引いています。 安易に弓力を落として、中途半端な気合いの入れ方の稽古では、恐らく以前のように手先の弓に戻っていたと思います。「とかく人は易きに流れ易い」を再現していたのでしょう。しかし、「弱弓習うべし」という言葉もあります。弱弓であればあるほど、自分の実力が矢所に現れてしまうからです。弱弓でも自己の思っている事を実践出来ないのは、これもまた「とかく人は易きに流れ易い」の体現なのでしょう。恐らく、週1回の稽古が当分続くことになると思います。当面は弓力20s程度の弓で頑張りますが、16sのグラス弓を引かざるを得ない場合も大いにあり得ると思います。葛藤の狭間で悩むと思いますが、自己を客観的に判断して、自分自身で決断を下したいと思います。
(平成19年12月3日追記)
Re:はじめまして 投稿者:管理人 投稿日:2007年 5月12日(土)23時27分38秒
右手薬指の腱鞘炎 投稿者:管理人 投稿日:2007年 6月16日(土)15時08分55秒
腱鞘炎の原因 投稿者:管理人 投稿日:2007年 6月20日(水)22時32分26秒 |