続・弓返り考


00s00f 00s01f 00s02f

00s03f 00s04f 00s05f

00s06f 00s07f 00s08f

00s09f 00s10f 00s11f

 Webサーフィンをしていますと、「弓返りしなければ、矢は真っ直ぐ的に飛ばない。」という書き込みを良く目にします。うーん、「弓手を思いっきり締めても弓が回ってしまうくらいの角見がなければ、矢は真っ直ぐ的に飛ばない。」であれば問題ないと思うのですが・・・。
 上の決して上手ではない射手の画像からも分かるように、弓返りは弦と筈が分離した後に起きる現象です。つまり、弓返り自体は矢の飛行には全く関与していないのです(オマケか?:kenさんの言葉をそのままお借りしますと、矢に与えきれなかった弓の運動エネルギーを分散させるスタビライザの働きを成す。なるほど得心しました。)。ただ、正しい手の内と角見が働けば(馬手が弛んでいないことが大前提)、早くて強い矢勢となり、狙い所へ正しく矢が飛行し、鋭く早くピッタッと回転が止まる弓返りが起きてしまうのです。

(自己分析)
00s00f : 既に矢筋の伸合いが止まり、両肩から縮みかけている所。
00s01f : 手首からの弛みが発生。
00s02f : 弦枕から弦が分離。弓の下部が上部より早く戻る事がよく分かる(和弓の基本特性)。
00s03f : 丁度内竹がこちらを向いている。矢がかなり飛行してから、馬手が動き始める
00s04f :
弓返りが進行してる。弓手が締まっていないので、弓の下部がかなり出ている。弓が伏せ切れずに照り始め、弓の下部がすりこぎ運動を始めた。
00s05f :
さらに弓返りが進行し、丁度向こう弦。弓の下が出ているのは、弓下部の復元力を最大限矢に与える上押しと小指の締めが、発射時に貧弱であったことの証明。タイミングが遅ければ意味がない。
00s06f :
弓返りが進行してる。この頃から肩甲骨のせり上がりが目立ち始め、弓手を切り下げ始めている。肩甲骨がせり上がるために、弓手が上腕から落ちているように思う。
00s07f : 丁度外竹がこちらを向いている。弓手がどんどん落ち始めている。
00s08f :
00s09f : 弓返りがほぼ完了する。弓返りが終わった後も弓手が下がっている。
00s10f : 馬手が捻り切れていなかったので、解けて離れた馬手を修正し始める。
00s11f : 上押し・小指の締めを発射から遅れて効かせ始めるので、弓が的方向に更に倒れてしまう。

 伸合いが止まり縮んでいるのでそもそも論外ですが、00s01fの所で馬手が手首から弛んでいることにより、弓の復元力が減衰しています。弓の復元力減衰は矢に与えられるエネルギー減少そのもので、矢勢と弓返りの早さに影響を与えてしまいます。また、弓手の締め・上押し・角見が遅れて効かせられているために、弓の復元力や、弓の下部が先に戻ろうとするエネルギーを矢に十分伝達出来ず、これもまた、矢勢と弓返りの早さに影響を与える結果となりました。
 古人が角見の効き具合で、矢に加速度を与える時間の長短があることを悟り、筈と弦の分離ポイントをを見抜いて、「弦の別れ 弓の別れ 4寸の別れ」と教えていたことには、その慧眼に驚くと同時に敬服致します。近年になって高速度撮影の技術が進歩し、古人の教えに誤りがなかった事が証明されたのですが、これが江戸初期までには見いだされていたことに、末恐ろしさを感じてなりません。
 また、私の射は、離れの前に馬手々首が少し戻って離れているのですが、やはり離れは客観的に見て突然起きなければならないと思います。伸合いが止まり縮み始め、離れを周囲に感づかせる様な隙のある鈍い離れでは、良い矢通間や真の弓返りは一生望めないでしょう。「伸合い」から「離れ」までの例えですが、稲の葉に露が吸着して葉が少しずつ傾き、露が葉先へ流れて徐々に溜まりだし、ついには落ちて「ピンッ」と稲の葉の傾きが復元する。しかし、落下のきっかけが、葉の傾きによるものだったのか、露が重力に耐えきれなくなったものなのか、稲の葉も露も分からなかったという、古人の例えセンスは非常に鋭いと思います。
平成19年4月3日

<追記:2010/12/17>
弓力が異なっているのですが、当時と現在とを比較すると射の傾向が殆ど変わって無い様です。むむむ・・・。
(2005/12当時:弓力23kg→2010/12現在:弓力18kg)
でも、少しは良くなったのかなぁ?
・・・、やっぱり離れ際に伸びが止まってます。
押しも止まっているのでしょうね、弓手がグッと下がっちゃいます。
引く矢束、引く矢束。失敗など恐れずに引く矢束。馬手だけじゃなく弓手・弓手肩も!

(参考)
高速度撮影をした同じ日の稽古動画です。

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